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花の名前の付け方

 花壇の花の名前には短いもの(キクパンジーなど)もあれば、とても長くて、舌をかんでしまいそうなカタカナ名(クリサンセマム・ムルチコーレプリムラ・ポリアンサスなど)も存在します。どうして、このようなことが起きているのでしょうか。それは、複数の命名法が使われているからです。花の名前の付け方は、大きく分けて次の4種類に分けることができます。

  1. 本来の日本名、あるいは中国名由来だが、完全に日本語化しているもの
  2. 英語名、あるいは他の外国名をそのまま音読したもの
  3. 学名の属名を音読したもの
  4. 学名全体(属名+種小名)を音読したもの

例を挙げながら、それぞれの命名法を紹介しましょう。

1.本来の日本名、あるいは中国名由来だが、完全に日本語化しているもの
  例:アサガオ(朝顔)、キク(菊)、スイセン(水仙)など
 動植物名は文章中で他の言葉から容易に区別できるように、カタカナで書くのが習慣です。よって、古くから日本で栽培されている園芸植物もカタカナで表記します。同じ種類の仲間が存在するときは、名前の頭に、日本、西洋、雛、夏、ラッパ、寒などの単語を追加して、ニホンサクラソウ、セイヨウサクラソウ、ヒナギク、ナツギク、ラッパズイセン、カンズイセンと名付けることも行われています。昔から日本にあった野生植物と比較して命名することもあり、サンシキスミレ(三色のスミレ)やハナスベリヒユ(花の大きいスベリヒユ)がその例です。また、外国名を和訳して付けられた植物名もあります。英語名forget-me-notを和訳したワスレナグサはその代表傑作です。

2.英語名、あるいは他の外国名をそのまま音読したもの
  例:チューリップ(tulip)、パンジー(pansy)、ヒアシンス(hyacinth)など
 外来語が誕生する一般的なパターンです。カタカナ表記なので、どうしても多少の不一致が生じます。ヒアシンスと書くかヒヤシンスと書くかは。許容範囲内です。ノースポールのように、英語の栽培品種名がそのまま植物名として使われることもあります。

3.学名の属名を音読したもの
  例:サルビアSalvia)、シクラメンCyclamen)、メランポディウムMelampodium)など
 花の日本名や英名は基本的にはその国の中だけで通用する名称です。それでは不便なので、学名という世界共通の名称が使われています。学名は原則としてラテン語の2つの単語を並べて付けられています。1つ目の単語は属名といって、その植物が所属するグループの名前です。2つ目の単語は種小名といって、それぞれの種の特性を簡潔に示す名称です。ちょうど「サクラソウ+日本の」とか、「スイセン+ラッパ状の」のような名前の仕組みなっていると思ってもよいでしょう。ある種の園芸植物では、最初に日本へ入ってきた品種については、グループ名だけを音読みして植物名となっています。ラテン語の読み方は国内ではローマ字読みするのが一般的です。そのため、多少のバリエーションが存在します。
 ちなみに、日本語のカタカナ表記と同じ理由により、学名は斜字体で書くことが習慣となっています。また、属名は固有名詞として取り扱われており、最初の文字が大文字になります。英語名、あるいは他の外国名をそのまま音読したもの(2)と、例に挙げた植物名を比べてみてください。

4.学名全体を音読したもの
  例:サルビア・ファリナセアSalvia farinacea)、プリムラ・マラコイデスPrimula malacoides)など
 同じ仲間の2つの種がほぼ同時に日本へ入ってきた時、あるいは同じ仲間で別の種が日本へ入ってきた時は、3番目の命名法(学名の属名を音読み)では植物名の区別が付かなくなります。このような場合、外国名の音読み(2番目の命名法)や学名の属名の音読み(3番目の命名法)の名前の頭に、日本名(1番目の命名法)を加えてキバナコスモス(黄花+コスモス)、ベニバナサルビア(紅花+サルビア)と命名されることもありますが、全体を音読みすることが行われています。全体を音読みしたものが、とても長くて、舌をかんでしまいそうなカタカナ名の正体です。植物名を整理しようという意見もありますが、いまのところ、動きはないようです。


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